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読んでいただきたい書籍のちょっとしたさわりの部分を紹介しています。お暇でしたら見てください。

『シンデレラさん、お大事に。』
精神科医が読み解くおとぎ話の真実

著者 杏野 丈

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私の著書です。西炯子先生の漫画もすばらしく、われながら面白い一冊ですので読んでみましょう。 ここでは、はじめにと目次を紹介しましょう。

はじめに

 わたしは精神科医です。と同時に、二児の親でもあります。そんなわたしは、毎晩子供が寝るときに、童話を読み聞かせます。
 久しぶりに読む童話は、わたしにとって、大きな驚きでした。読む話、読む話、どれもこれもが登場人物が、精神医学的な問題を抱えていたのです。
 拒食症で苦しむもの、人格障害のもの、依存症のもの、性に悩むもの、そんな人たちばかりなのです。その悩みは現代の人が抱え、私が精神科医として取り組んでいるものとひどく似通っていました。そのことに気が付くと、登場人物たちは、もはや遠いおとぎの国の見知らぬ人物ではありません。昼間、病院で診察している患者さんと同様に、病気になった原因を突きとめ、治療を何とかしてあげないといけない、それが精神科医としての責務である、そんな気持ちでわたしはいっぱいになりました。すぐにでも、童話専門外来を設立し、彼らを何とか救いたい。でも、彼らは、本の世界に住んでいます。専門外来をつくったところで、住む世界の違うわたしの病院に、受診してはくれないでしょう。

 それならば、わたし自身が本の世界に往診に出かけて行くしかありません。そうすれば、童話の主人公たちと出会い、彼らを治療することができるのです。この本は、童話の主人公たちの世界に入り、病気を解明し、治療するために書かれたのです。これを読めば、みなさんもそんな悩みにどうとりくんでよいかがわかるでしょう。では、みなさん、わたしの白馬に一緒にまたがって、おとぎの国へサイコセラピーに出かけましょう。
『性非行少年の心理療法』
著者 針間 克己

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序章 性非行の責任の所在はどこにあるのか

 本書の中心となるテーマと、執筆動機を示すために、最初に二つの質問をしてみることにしよう。

 質問1 性非行の責任はどこにあるのか?
 質問2 性非行への対策はどうすればよいのか?

 この2つは簡単な質問だが、人の出す答えはさまざまである。いくつか代表的なものをあげてみよう。まずは質問1への答えである。

質問1の答え1「受験戦争のひずみが子供がおかしくする。」
質問1の答え2「ポルノやセックスに関するマスコミ報道が子供をあおる。」
質問1の答え3「パソコンやTVゲームによって現実と空想の区別がつかなくなる。」
質問1の答え4「お金、物質優先の世の中が悪い。」
質問1の答え5「腐敗した政治家のモラルの低下が子供にも影響している。」
質問1の答え6「挑発的で、隙のあった被害者の女性が悪い。」
質問1の答え7「男性優位の社会が悪い。」
 よくある意見は、だいたいこんなものではないだろうか。質問2の答えも、質問1の答えと対応したものとなる。

質問2の答え1「勉強ばかりではなくゆとりがあり、心の教育もする。」
質問2の答え2「セックス情報の氾濫を制限する。」
質問2の答え3「パソコンやTVゲームの使用を制限する。」
質問2の答え4「心を重視した世の中にする。」
質問2の答え5「腐敗した政治を正す。」
質問2の答え6「女性が隙を見せないように教育する。」
質問2の答え7「男女平等の世の中にする。」

 さてみなさんの意見はどうであろうか。
 質問1の答えから考えていきたい。いくつか例示した意見はそれぞれに何らかの意味があるのかもしれない。また、社会評論をする立場からはごもっともなのかもしれない。しかし、これらの意見はより本質的な質問1への答えをしばしば覆い隠す。すなわち、

質問1の答え「性非行の責任は性非行を行った本人にある。」

 という当然の答えである。後に詳しく述べるが、性非行を行った少年は、多くの場合、その理由として、「女性のほうが誘っていたから」「親に叱られむしゃくしゃしたから」「アダルトビデオを見てたらむらむらしたから」といったように、他者にその責任を押しつけようとする。例示ししたようないくつかの答えは、この少年の言い訳を後押しすることとなり、責任の所在があやふやなものとなってしまう。責任の所在が性非行を行った少年自身にあると明確に認識することが本書の前提の第一である。
 次に質問2の答えを考えよう。質問1の答えから当然の帰結として、

質問2の答え「性非行を減らすには性非行を行った本人に対して治療を行う。」

 が筆者の答えである。この答えは、あるいは「それでは予防にはならない」と思う人もいるかもしれない。確かに、すでに性非行を行ったものに対しての治療をしたところで性非行そのものをなくすことはできない。しかしながら、次の章で詳しく述べるように、性非行は同一人物により、繰り返される傾向があり、大人になり性犯罪者になるものもいる。そのことを考えれば、一度性非行を起こしたものに治療を行うことで、再非行を防ぐことは、性非行全体の総数を減らし、被害者数を少なくする上で、直接的で確実な方法であろう。
 それに、例示したような対策、解決方法は実は何もしないといっているのと同じである。
「社会を変える」「教育を変える」「世の中を変える」といってみたところで、そうたやすくできることではなく、口先だけのスローガンにしかならない。さらにたとえ変えることができたとしても、それが性非行を減らすことにつながるかどうかも不明である。
 そのような不確実なスローガンを唱えることではなく、いま、ここにいる性非行少年の治療に取り組み、その再非行を防ぐことが、確実に被害者を減らすことであり、第一に行うべきことである。
 近年、性非行少年に対する心理療法的アプローチの研究は進み、治療技法は向上してきている。最近の研究によれば、性非行少年の治療としては、一般的心理療法だけではなく、より性非行に標的を絞った治療技法が必要なことが明らかにされてきている。しかし、我が国では、性非行少年への対応は、現在のところ多くの場合、矯正としての法的対応や、一般的な性教育、あるいは一般的な心理療法などに限定されており、性非行に標的を絞った治療技法が用いられることは乏しい。
 そこで、本書では最近の性非行に関する、理論、治療技法を紹介していくこととする。少年性非行に関する米国特別委員会による報告(National Task Force on Juvenile Sexual Offending 1988,1993)をはじめとし、主として米国における文献に基づき紹介していくため、必ずしも日本の現状とは一致しない点もあるかもしれない。だが、日本の現状は不明な部分も多く、何が一致し、何が不一致なのかも定かではない。この書を期に、日本でも性非行に関する研究が進み、日本に適した、理論、治療技法が生まれることを期待したい。
『一人ひとりの性を大切にして生きる』
インターセックス、性同一性障害、同性愛、性暴力への視点

著者 針間 克己

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はじめに

最近、性教育をめぐっての議論が騒がしい。
子供達に何を教えるべきなのか。何を教えないべきなのか。
ペニスや膣という言葉を小学生に教えるべきなのか?
コンドームの使い方を中学生に教えるべきなのか?
 こんな議論には、何か違和感を覚える。

 また、最近は性同一性障害やインターセックスのことが話題になることも多い。
 そこでの話題も「正しい知識を身に付け、偏見を持たないようにしましょう」といった趣旨で語られることが多い。
 こんな趣旨にもどこか違和感が覚える。

 子供に性について語るとき何か大切なことを忘れているのでは、という思いが拭いされなかった。
 幸いにも、保健ニュースで性について連載をする機会をいただいた。
そこで、常日頃、思っていることを書かせていただいた。
その連載を加筆修正したのがこの本である。
インターセックス、性同一性障害、同性愛、性暴力などを取り扱ったが、根底に流れているのは一つのテーマである。

「一人一人の性を大切にして生きる」

 である。
 
 お読みいただければ幸いである。
『がん患者の幸せな性』
あなたとパートナーのために

共訳者 高橋 都 針間 克己

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訳者あとがき 針間 克己

 高橋都先生と知り合ったのは、1999年に香港で開催された世界性科学会でだ。同じ日本からの出席者ということで話す機会を得た。高橋先生の取り組まれているテーマは「ガンとセクシュアリティ」についてであった。正直いってこのようなテーマにはさほどの興味はそれまではなかった。だが、高橋先生の話をうかがい、感銘を受けると共に自分の不明を恥じることになった。具体的には高橋先生は「ガンの治療を受けた人々の性生活をいかにケアするか」といった問題に取り組んでいた。わたしは精神科医として、性の問題には関心を持っているという自負はあった。しかし、ガンについては「性生活はなくても仕方ないだろう」と心のどこかで思っていたのだろう。だが高橋先生の話を聞き、当たり前のことではあるが、ガンの治療を受けた人も、性の喜びを持ち続けることが大切であることに気付かされた。
 その後も、いくつかの学会で高橋先生と話す機会を得て、この本を翻訳することの手伝いをすることにもなった。翻訳の手伝いを頼まれた当初は、ガンについては専門外なのでちゅうちょした。が、内容が心理的側面にもかなり触れらているし、訳者が女性だけでなく男性が入るのもバランスがいいかと前向きに考え引き受けることにした。
 訳してみると、アメリカ的というかその徹底したマニュアル、ハウツーには圧倒されるものがあった。日本人の訳者としては、「まあ、愛さえあれば」とか「気持ちさえ伝われば、そこまでやらなくても」と思うこともあった。しかし、途中でそれが過ちであることに気が付いた。誰にとっても、愛は表現しなければ分からないし、気持ちの伝え方は実に難しい。ガンの治療後であればなおさらであろう。この本は非常に具体的かつ詳細にその方法を教えてくれる。もちろん何を実践し何を行わないかは、読むものの自由である。だが、まず最初に必要なのは、情報である。正確な情報があってはじめて何をして何を行わないかが判断できるのである。
 この本が、ガンを抱える方々やそのパートナーの目に留まり、より豊かな人生に役立つことを願いたい。
『性同一性障害って何?』
一人一人の性のありようを大切にするために プロブレムQ&A

共著者 野宮 亜紀, 針間 克己, 大島 俊之, 原科 孝雄, 虎井 まさ衛, 内島 豊

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Q 性同一性障害は治るのですか?

性同一性障害は治癒するのでしょうか。いくら手術しても、生殖能力はないし、性染色体もそのままだから、完全な男性や女性になるわけではないと思います。

A難しい質問ですね。
 ここでは「治る」とはどういうことなのかを考えていく必要があります。性同一性障害が治るとはどういうことなのでしょうか。性同一性障害は身体的性別とジェンダー・アイデンティティ、つまり体と心の性別が不一致で、そのことに苦しんでいる状態を指します。このことから、多くの人は性同一性障害を「治す」こととは、体と心の性を一致させることだとばかり考えてしまいます。
 実際に、医療でも治療行為として、ホルモン療法や性別適合手術が行われます。性別適合手術まで行えば、ほぼ、心の性別に体の性別が一致したといえるかもしれません。ですが、質問にもあるように、移行した性別での生殖能力はないですし、性染色体ももとのままです。100%心の性別に合致した体の性別になるわけではないのです。
 では、性同一性障害はやはり治らないのでしょうか?そうではありません。もう一度、性同一性障害とは何かを思い出しましょう。性同一性障害とは、体の性別と心の性別が不一致なだけでなく、そのことに苦しんでいる状態なのです。ですから、苦しみがなくなったときには、「治った」といえるのではないでしょうか。
 苦しみをいかに減らしていくかは、人さまざまです。ホルモン療法や、性別適合手術を重視する人は多くいます。これらの治療により、身体的外見や機能が心の性別に近づくことで、苦しみが大きく減るからです。ただ、これらの治療をしても、苦しみは十分には軽減されないこともあります。体の性別が心の性別に近づいても、社会的性別が一致してない場合も多いからです。職場や学校での性別の扱い、あるいは身分証明書等での性別表記、これらが元のままだと、いくら体が変わっても、苦しみは持続するからです。
 また、逆に性別適合手術やホルモン療法や苦しみの軽減のために必ずしも必要でない性同一性障害の人もいます。体の性別と心の性別が一致しない自分のありようをそのままに認めていくという生き方を選択するのです。あるいは、反対の性別の服装を着て過すなど、時折の性別移行で満足を得ようとするのです。
 このように、性同一性障害を抱える人の一人一人にとって、その苦悩を和らげていく方法は異なるのです。ホルモン療法や性別適合手術によって、体の性別を心の性別に近づけるというのは、そのうちのひとつにしか過ぎません。
 性同一性障害を抱え、苦悩しながら社会の中で生きていく当事者は、ただ、体の問題だけではなく、社会制度、社会からの無理解、周囲との人間関係、経済的困窮、当事者自身が持つ性同一性障害への嫌悪感などさまざまな事で、苦しんでいるのです。一人一人が抱える、これらの問題を解決していき、苦悩がなくなったとき、性同一性障害は「治った」といえるでしょう。
 結論としては、「完全な男性になる」「完全な女性になる」という意味で、性同一性障害が治ることは難しいかもしれません。しかし、医療の助けや、社会的理解、周囲の協力等によりそれぞれが抱える苦悩が軽減され、日常の生活が安心して暮らせるようになることは不可能ではなく、そういった意味では、性同一性障害は「治る」、と私は考えます。
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