1999年の「臨床心理学大系19人格障害の心理療法」中の論文です。性同一性障害に関する基本的なことがわかります。

性同一性障害の心理療法

                            針間克己
はじめに

 性同一性障害者は我が国にも従来より存在していたが、1969年東京地裁において、性転換手術を行った医師に対して優生保護法違反の判決(いわゆるブルーボーイ事件)が下されて以来、この疾患に関する議論は医学界でタブー視され、その臨床や治療について論じられることは乏しかった。
 しかし、1998年埼玉医科大学において性転換手術が行われるようになり、ようやく医学的治療の対象として我が国でも認知されるようになった。現段階では(1998)我が国における知見の蓄積は乏しく、その治療法は諸外国の知見をふまえたものとなるが、性同一性障害者を取り巻く法律、制度、社会的態度などは我が国固有のものがあり、治療者はその固有の問題も留意しながら、臨床にあたる必要があろう。
 本稿ではまず、性同一性障害の概念や臨床的特徴等を記した後にその心理療法を論ずる。心理療法は狭義に捉えず、心理療法的関わりを持つ治療者が実際の臨床においてなすべきことを幅広く記すことにする。なお、性同一性障害には、小児のものもあるが、本稿では青年または成人の性同一性障害を中心に論じる。

1節 性同一性の概念

1.性同一性の概念
 人の性別は大別して、身体的性別すなわちセックスsexと、心理的社会的な性別すなわちジェンダーgenderがある。ジェンダー概念は、1950年代、StollerやMoneyにより見いだされ、発展してきた。性同一性とはgender identityの訳語であり、Money(1975)により「一人の人間が男性、女性、もしくは両性として持っている個性の、統一性、一貫性、持続性をいう」と定義されている。なお、性同一性の「同一性」は、「身体的性別と心理的性別が一致して同じであること」との意味に誤解されやすいが、「同一性」とはidentityの訳語であり、定義からもわかるように、自己の性意識が継続的に同一であることを指し、身体的性別との一致不一致とは関係がない。
2.性同一性の形成幾序
 Money(1975)は性同一性の形成幾序を「人の性同一性は、生誕時は中性だがその後臨界期(18~24ヶ月)までの、家族などの幼児を取り巻く周囲、社会からの刺激で決定され、いったん決定されると変更することはない」との仮説を出し、従来は支持されてきた。しかし、この仮説への疑問が近年出されている。例えば、Moneyがその仮説の根拠とした代表的症例に対して行った追跡調査がある。これは、ジョンという男児が生後7ヶ月でペニスを事故で失い、女性としての外性器手術を受け、女児ジョアンとして育てられ、Moneyが「ジョアンは自己の性別を女性として認知し、女性として育った」と報告した症例を、Diamondら(1997)が追跡調査を行ったものである。それによると、ジョアンは自分が女性であることに違和感を感じ、男性としての性同一性を確立し、ペニスの再建手術を受け、男性として結婚し、妻と性交をし、父親として養子を育て、生きていたという。また、性染色体はXYだが男性ホルモン異常である5α還元酵素欠損によって、誕生時よりその外見から、女性として性別を割り当てられ、女性として育てられたインターセックス児18名のうち16名が思春期以降に性同一性が女性から男性に変わったという報告をImperato-Mcginley(1979)がしており、7名中4名という同様の報告をMendez(1995)がしている。その他にも男女の脳の形態学上、機能上の性差研究の知見等より、性同一性の確立には生育環境要因だけでなく、生物学的要因が関与しているとの指摘がなされ、臨界期を過ぎても思春期が過ぎるまでは可変性があるのではとの疑問が出されている。
3.性同一性に関連する用語
 性同一性に関連するないしは混同しやすい概念・用語に、性役割gender role、性的指向sexual orientation、性嗜好sexual preferenceなどがある。
 性役割とは、社会的に規定された性別の行動様式を指す。性役割は主観的内的経験である性同一性を行動面で示すものとして、性同一性とはコインの表裏のような密接した関係にあると考えられることがある。しかし、性同一性障害者では、社会で適応しやすく生きるために、自己の性同一性とは違う性役割を取ることもあり、性役割における性別と性同一性における性別が一致するとは限らない。
 性的指向とは、性的興味興奮を引き起こす対象の性別は何かということであり、具体的には異性愛か、同性愛か、両性愛か、無性愛かということである。性的指向と性同一性は混同して論じられたこともあったが、現在ではそれぞれ別個の概念と理解されている。
 性嗜好とは、性的興奮を引き起こすためにどのような性的行動やイメージを欲するかである。その障害がパラフィリアである。

2節 診断基準および診断的特徴

性同一性障害Gender Identity Disorderとは前節で述べた性同一性が身体的性別と一致しないために苦痛や障害を引き起こしている疾患である。その診断基準としてDSM-W (精神疾患の診断と統計のためのマニュアル 1994)で定められたものを表1に示す。
 性同一性障害の症状には主要な二要素があり、それが診断基準のAとBである。診断基準Aは反対の性に対する強く持続的な同一感であり、診断基準Bは自分の性に対する持続的な不快感及び不適切感である。成人の場合には反対の性の役割をとりたい、あるいは内分泌的、外科的手段を用いて反対の性の身体的外見を身につけたい、という強い欲求として顕在化する。また、反対の性の行動、服装、仕草をしたり、公衆の場面で反対の性として通用するように努力する。
 診断基準Cは身体的疾患である半陰陽を除外するためのものである。この診断基準を拡大解釈あるいは誤解して、性同一性障害の定義に「生物学的性別は完全に正常であって」との規定を含むものを見受けることがある。しかし、後述するように、性同一性障害の原因の一つとして、脳の性分化異常が考えられることを考慮するならば、「生物学的性別は完全に正常であって」の規定は誤りといえるだろう。
 診断基準DはDSM-Wの性に関する疾患の診断基準すべてに見られるものである。これは性というものは多様で幅広く、「個人的趣味や個性の範囲」と「精神疾患」の明確な区分をするのが困難な場合があり、その境界線を明らかにするためのものと思われる。すなわち多数のものとは違う性的ありようを持つもの達の「自分たちの性的ありようは少数派ではあっても、それは個性であり、精神的な異常ではない」という主張に対し、「著しい苦痛や社会的機能障害を起こしている点で精神疾患である」という論法である。この基準によれば、自己の性的ありように対して、違和感がなく悩みもないものは、精神疾患から除外されることとなる。
 性同一性障害者の苦痛や機能障害は、子供時代には年齢相応の同性との仲間関係を発達させることが出来ずに、孤立し、いじめや登校拒否などの形となり、大人の場合は、対人関係の問題や、学校や職場になじめないなどの形となり出現する。
 なお、DSM-IVにおいて、性同一性障害は「人格障害」ではなく「性障害および性同一性障害」に分類され、多軸評定では第1軸(人格障害と精神遅滞を除く臨床疾患)に記録される。

3節 鑑別診断および関連する疾患

 鑑別診断や関連する疾患等のいくつかについて説明する。これらの疾患は、外見や症状に類似点が多く、また同時に複数罹患していたり、境界域の性質の場合もあるが、性同一性障害の正確な診断に近づくためには、可能な限りその鑑別に留意する必要がある。
1.Transvestic fetishism
 日本語訳では「服装倒錯的フェティシズム」とされているが、倒錯という価値判断を伴う訳語の使用は適切ではなく、朝山の訳語を使用した「異性装的フェティシズム」 ないしは「服装転換的フェティシズム」がより妥当な訳語だと筆者には思われる。これは性的興奮を目的に異性の服装をするものをいう。異性の服装をするものは性同一性障害においても見られるが、その場合の目的は自己の性同一性に合致するような外見を望むためであるが、Transvestic fetishismではその目的は性的興奮を得るためである。
2.Dual-role  transvestism (両性役割服装転換症)
 異性の一員であるという一時的な体験を享受するために、生活の一部分を異性の服装を着用して過ごすものをいう。性同一性障害とは永続的な性転換は望まない点が異なり、Transvestic fetishismとは異性装をするときに性的興奮は伴わない点が異なるが、この両者との鑑別が困難なものもいる。
3.Autogynephilia
 日本語に適当な訳はないが、「自分自身が女性だと想像することで性的に興奮する男性」(Blanchard 1993)との意味で「自己女性化空想愛」とでも訳せようか。自分が女性の衣服姿である状態を想像するもの、下着姿である状態を想像するもの、全裸姿である状態を想像するものなどがいる。衣服姿状態を想像するものはTransvestic fetishismとなりやすい。全裸姿状態を想像するものは、想像だけでなく、実際の性転換を希望することもあるが、その目的は「外見が女性となることで性的興奮を得る」ことである。
4.同性愛
 既述したように、性のありようを考える上で、性同一性と性的指向はそれぞれ別個の概念と理解されている。すなわち同性愛者であっても性同一性は正常の場合もあれば、性同一性障害であっても異性愛の場合もあり得る。しかし、同性愛者が同性から好かれる対象となるために、自らを異性のように見せかけている場合などは、鑑別に留意する必要がある。
5.妄想状態
 精神分裂病患者などで、反対の性に属するという妄想を持つものがまれにみられる。彼らの妄想は、「自分の身体的性別を考慮しないで反対の性の一員である確信している」のに対し、性同一性障害者が述べるのは「自分の身体的性別は十分理解しているが、それでもなお反対の性の一員であると感じる」である。
6.間性(半陰陽 intersex)
 間性とは解剖学的、身体的性別が、性染色体異常、性腺の異常、外陰部の異常等により、正常の男性とも女性ともいえずに、中間に位置する性を指す。性同一性障害は身体的にはっきりとした間性は除外されるが、最近ではその原因に生物学的異常も疑われており、厳密には間性との鑑別が困難となる可能性もある。
7.職業
 サービス業等で接客上の必要から、自己の性別とは反対の性別のごとく振る舞うものがいる。また女性的な男性との性行為を好むもの(gynandromorphophilia,Blanchard 1993)や、男性的な女性との性行為を好むものがおり、それらに対して性行為を行うことで得られる経済的報酬を目的として、異性のごとく振る舞ったり、性転換を求めるものがいる。これらのものにおいても、程度の多少はあれ、性同一性の障害があることも多く、また逆に性同一性障害者の中にも通常の職業への就労困難等より、これらの仕事に従事しているものもおり、その鑑別は困難なこともある。
8.社会的理由による性役割の忌避
 男性に対してのみ徴兵制を行っている国で徴兵を回避するために、男性から女性への性転換を望む場合などがある。

4節.臨床的特徴

 性同一性障害の臨床的特徴について記す前に今後文中で使用する用語を説明する。  性同一性障害者の性別は身体的性別、ジェンダー、法的性別などそれぞれ違う場合があるため、通常の男性、女性という表記は正確さに欠け、MTF、FTMという用語を用いることが多い。MTFとはmale to femaleの略語で男性から女性へ性別を移行する人を指す。FTMとはfemale to maleの略語で女性から男性へ性別を移行する人を指す。
 性別を移行するときの手術を示す用語はSRS(sex reassignment surgery)である。我が国では現在も性転換手術という用語を用いているが、海外の文献ではsex change operationという用語は用いられていず、SRSが一般的である。SRSを直訳すれば「性別再割り当て手術」であり、「性転換手術」の与える「性別を意図的に変える」という印象と比較し、「誤って割り当てられた性別を、適切に再び割り当てる」との意味が感じられ、より手術に対して肯定的な印象を与える。我が国では「性別再判定手術」と訳されることが多いが、assignとは「割り当てる」の意味であり、直訳の「性別再割り当て手術」がより適切だと筆者は考える。 1.有病率  有病率の資料になりうる疫学的研究は乏しい。参考となりうるのはSRS等の治療を希望し医療機関を受診するものの統計である。各国の統計を見ると、おおよそ男性3万人に1人、女性10万人に1人、MTF:FTMは3対1と推測される(Cordula W. 1996)。我が国では、これらの統計を参考にし、2,200から7000人程度の性同一性障害者がいると推定されている。今後、SRS技術への評価、社会的反応が好意的か否か、治療への経済的負担などの要因が、我が国の治療希望者数の増減に影響を与えると思われる。
2.経過
 MTFの性同一性障害者の発症の経過を考えるには、二種類の亜型への分類が有用である。第一の亜型は一次性と呼ばれるもので、小児期または青年期前期に発症し、青年期後期または成人期に受診する。第二の亜型は二次性と呼ばれるもので、発症が比較的遅く、異性装症に引き続くことが多いといわれる。
 FTMの性同一性障害者は、比較的均質な群といわれ、小児期または青年期前期に発症し、青年期後期または成人期に受診する。
 性同一性障害者の家庭や社会での適応をMTFとFTM間で比較すると、Verschoor(1988)やKockott(1988)によれば、FTMの方が両親や性的パートナーとの関係が安定しており、職場や学校での適応もよいことが多いという。
 SRSを希望する年齢は、van Kesteren PJ.(1996)によるオランダの統計では、MTFは30歳前後が多く、FTMは25歳前後が多く、中高年はほとんどいないという。 3.性的指向
 既述したように性同一性と性的指向は、おのおの別個の概念であり、性同一性障害者はMTF、FTMいずれもが男性、女性、同性、無性(男女いずれに対しても性的指向がない)への性的指向を持ちうる。
 FTMの性同一性障害者は従来ほとんどが女性への指向といわれてきたが、男性への指向のものに関する報告も見受けられる。Coleman E.(1993)によれば男性への指向の場合には、相手の男性から「女性」と見なされるために、性行為は不満足なものになることが多く、また性行為は膣へのペニスの挿入を伴うこともあるという。  MTFの性同一性障害者はその性的指向は様々である。MTFの性同一性障害者は自己の男性性器であるペニスに違和感を持つと思われるが、Frank(1990)によれば、男性への指向のMTF の性同一性障害者の44%が性活動がなく、19%がペニスを用いずに性行為を行い、37%がペニスを用い性行為を行うという。また、Blanchard(1993)によれば、女性への指向のMTFの性同一性障害者は、男性への指向の者に比べて多くが、異性装をすることで性的興奮を経験するという。
 ところで、性同一性障害者にとって、二者間の身体的性別の関係が「同性愛」の場合でもジェンダーの関係に着目した場合には、「異性愛」である。すなわち、「自分の身体的性別は男性でも、心理的には女性なのだから、男性を愛することは、自分にとっては異性愛だ」などのように感じることがある。このことより、Coleman(1993)やPauly(1974)は、「homosexual」「heterosexual」という用語は、「sexual」という部分が示すように、身体的性別に主眼が置かれており、性同一性障害者のように、身体的性別とジェンダーが一致しない者に対しては、その使用は適切ではなく、ジェンダーに主眼を置いた、「homogenderal」、「heterogenderal」という用語を用いるべきだと提唱している。

5節 原因

 性同一性障害の原因は、性同一性がいかに形成されるかという議論をふまえ、心理学的観点および生物学的観点から研究されてきた。
 性同一性の形成が家族力動、養育者の態度、すり込み等の心理学的要因に影響を受けているという考えからいくつかの研究がなされている。Tsoi(1990)はMTFの性同一性障害者では父の子育ての関与や世話が少なく、FTMの性同一性障害者では母の子育ての関与や保護が少ないと、Cohen-Kettenis(1990)は性同一性障害者は両親を暖かみがなく拒絶的と見なしており、両親の離婚率が高いと報告している。
 性同一性障害は脳の性分化異常であるという仮説を根拠づける、性同一性障害者の脳の形態学および機能に関するいくつかの報告がされてきた。その中で1995年オランダのZhouらが、MTFの死後脳を調査し分界条床核の体積について報告した(図1)。分界条床核は性行動に関係が深いとされる神経細胞群であり、男性のものは、女性のものに対して優位に大きいとされる。研究は男性、女性、同性愛男性、MTFの分界条床核の体積を測定し、比較したものだが、MTFでは男性より優位に小さく、女性とほぼ等しいものであった。また、男性の性的指向、すなわち異性愛か同性愛かということは分界条床核の大きさとは関係が示されなかった。

6節 法的諸問題

性同一性障害はいくつかの法的問題を抱える。
 まずSRSが母体保護法(旧優生保護法)に違反しないかという問題である。SRSを行った医師が優生保護法違反とされたブルーボーイ事件は、その判決の中で手術が適法性を持つための諸条件を記しており、日本精神神経学会「性同一性障害に関する特別委員会」(1997)の制定したガイドラインを遵守すれば、その諸条件は満たされると思われる。
 次に、戸籍上の名前の変更問題がある。MTFが「太郎から花子」などのように男名から女名に、あるいはFTMが女名から男名への変更を求めることがある。それらの申立への認否は、個々判断されるものであるが、新聞報道等によれば、1998年より性同一性障害を理由に名の変更が認められた例もあるという。
 戸籍上の性別の変更は認められた例はない。しかし、これまでに我が国で一定の手続きを遵守してSRSを行ったものはいなかったため、一定の手続きをふまえSRSを行うものに対しての司法の判断はまだなされていないとの指摘もある。現在、スウエーデン、ドイツ、イタリア、トルコ等の諸外国では、性転換法が制定され、性同一性障害者の戸籍上の性別変更が可能となっている。我が国でも性同一性障害者の性別の戸籍変更に関する法整備を行うべきとの議論もある(石原明 1997)。
 
7節.治療者のなすべきこと

1.治療者の基本的態度
 性同一性障害の心理療法において特殊な態度が必要とされることはないが、注意すべきいくつかのことがある。
 まず、中立性、非指示的態度の保持があげられる。性同一性障害者の治療にあたっては、治療者の中立性、非指示的態度を阻害する多くの要素がある。たとえば、治療者自身のジェンダー観、男女観である。「男らしさ、女らしさは社会が押しつけることなのだから、無理に男になろう、女になろうなどと思わなくていい」との考えや、逆に「男のくせに女になろうとはなんと女々しいやつだ」などと思い、その考えが意識的ないしは無意識的に治療態度へと現れることがある。あるいは、MTFのSRSは文字通りの意味で、男性治療者に去勢不安を与え、「男がペニスをとるとは恐ろしい」等のSRSへの否定的感情を抱かせうる。性同一性障害者の希少性やその容貌等は、治療者に差別心、偏見、好奇心、好意等の様々な感情を惹起させるかもしれない。また、性同一性障害者は、人生の様々な局面での決断や選択を迫られる(家族等へのカミングアウト、職場での性役割、戸籍の名前の変更、ホルモン療法やSRSをすべきか等)。そこでは、治療者は具体的指示を与えたいと思うかもしれない。しかし、治療場面では治療者は中立的態度、非指示的態度を保持し、患者自身による意志決定に決断を委ねるべきである。つまり、塚田(1998)が指摘するように、いかなる性役割をするか、人生の選択をいかにするかは、患者自身の責任において自己決定されるべきものという明確な意識が患者治療者双方に必要なのである。
 ただし、後述するように患者は性同一性障害やその治療法に関する十分な知識が欠如したままホルモン療法やSRSなどの治療を求めたり、あるいは不安、焦燥、怒りといった混乱した精神状態において、十分な現実検討をしないまま早急に何らかの行動を起こそうとすることがある。患者の意志決定が、正確な知識に基づき、意志決定の結果を冷静に十分吟味したものとなるように、治療者は中立的態度を保持しながらも、同時にまた、判断材料となるための正確な医療情報の提供と現実検討を促す心理療法的関与も必要である。
 次に受容的共感的態度が要求される。治療者自身の問題で性同一性障害者に対して何らかの陰性感情が強く働き、受容的共感的態度が保持できない場合は、性同一性障害の治療者としては不適切であり、治療を行うべきではない。
 また、治療者の陥りやすい危険性として自らの内なる万能感、無力感に気づかないことがある。万能感とは患者が新しい人生を得るプロセスに影響を及ぼすことから来る、権力意識、支配感である。無力感とは心理療法だけでは治療が終わらず、ホルモン療法、SRSが行われる場合の治療者の敗北感である。この万能感あるいは無力感が内に湧き出ていないか、治療者は留意する必要がある。
2.治療目標  
 性同一性障害の「治療目標」とは具体的には何を指すのか。一般に考えられやすい目標として、「性同一性を身体的性別に一致させる」がある。しかし実際には、この治療目標に基づいて治療がなされることはまれである。その理由は、第一にこれまで試された精神分析的方法や行動療法的方法では成人において性同一性の変更は困難であることが示されきた(Stoller 1975, Marks 1970)ことであり、第二に患者自身はそのような自己の同一性を変更させる治療は望まず、治療への導入、継続が困難なことである。実際に治療目標として設定されるのは、性同一性はそのままに、それが身体的性別と不一致なことより生ずる、患者の苦悩、不安、葛藤などを減弱させ、現実世界においてその生活・生命の質(QOL)を向上させることである。また、ホルモン療法、SRS等の治療を行う場合、その前段階の準備として、またはホルモン療法施行中およびSRS実施前後の精神的諸変化への対応も、広い意味での治療目的となる。
3.診断と評価
 治療にあたっては診断と評価が行われる。第一に、性同一性障害か否かの診断であり、次にホルモン療法等の身体的治療が適用となるか否かが評価される。
 性別違和を訴えて医療機関を受診するものは、必ずしも性同一性障害者に限定されるとは限らない。いったい自分自身が何者であるか混乱し定まらないものもおり、鑑別診断の項で既述したように同性愛者や、異性装者などが受診することもある。慎重な面接で患者の性同一性を把握し、適切な診断をする必要がある。また、この診断は患者が自分自身が何者であるかという同一性を獲得する点で治療上も重要である。
 性同一性障害と診断したのちに、個々の患者の具体的状態を評価する。医療上の治療方法の選択は、患者自身が自己決定権を有するが、同時に医療行為を行う側もどの治療方法が適応となるかを判断する必要があり、そのためには個別の状態把握が必要だからである。この評価は患者がホルモン療法等の身体的治療を求める場合は、主にリアルライフテスト(real life test・ 実生活検査)(real life experience・実生活経験とも呼ぶ)の実施および医療情報の提供を通じて行われる。
 リアルライフテストとは性同一性障害者が自己の性同一性と一致した性役割で、実際に社会生活を過ごすことを試みさせ、そこで生じる様々な問題をどう捉え、どう対処するかを評価するものである。性同一性と一致する性役割で過ごすと職場、学校、家族、友人関係等で様々な社会生活上の問題や心理的葛藤が生ずる。そこで生ずる問題にいかに対応し、適応するかを評価することで、身体的治療の対象となるか否かを評価するのである。リアルライフテストにおいて望む性役割での生活が困難であるならば、身体的変化を伴う治療は好ましくない結果が予想され、治療方法としては選択されない。
 また、性同一性障害者の中には、ホルモン療法やSRSに非現実的な期待をし、それらの治療方法が魔術的に患者の抱える問題を全て解決すると信ずるものもいる。それらのものに対して、それらの治療法の限界を十分理解させる必要がある。その上で、それらの治療方法を行った場合にどのようなことが起きうるかを可能な限り想定させ、その対応を吟味検討させ、その検討が現実的か否かを評価しなけれなならない。  このようにリアルライフテストの実施や、医療情報の提供を行った上で、個々の患者がどのような治療方法を望むかを把握し、望んだ治療法を実施した場合に、その治療が患者の社会生活上・精神生活上の質の向上につながり、患者の苦悩・葛藤を減弱せしめるのかを検討する必要がある。
4.性同一性障害者への心理療法
 性同一性障害者に対する特別な心理療法といったものは存在せず、上述した治療的態度、治療目標のもとに行われる。すなわち、共感的受容的態度で接することで患者の低下したあるいは自責的な自己評価を是正する。本人の性同一性を明らかにしていき「自分は何者であるか」という同一性の発達を促す。さらに、社会生活上の様々な場面での困難への対処法を吟味検討させ、よりよい選択へと自己決定させることで、生活の質の向上を図る。
5.随伴する精神症状への治療
 性同一性障害は、抑うつ、摂食障害、アルコール依存、不眠等の精神症状を伴うことがある。これらの症状には、薬物療法も含めての治療を行う。
6.家族面接
 性同一性障害者の両親は、性同一性障害を医学的疾患と捉えず、非倫理的、不道徳的な行為と捉え、性同一性障害者の子供に対して非難したり親子関係を悪化させるものがいる。あるいは、その原因を自己の養育方法にあったと捉え、自責的になるものもいる。しかし、両親は、性同一性障害者の支援者となりうる有力な候補である。いたずらに親子関係を悪化させたり自責的にならないように、性同一性障害が医学的疾患であり、その原因としては、養育方法だけでなく、生物学的異常の存在が推定されることを理解させる必要がある。
 兄弟に関しても、両親と同様に医学的疾患であることを理解させるのが望ましい。  性同一性障害者の中には既に結婚しているものもいる。性同一性障害であることを配偶者が知った上での結婚であれば大きな問題はないと思われるが、結婚後に知った場合には関係が悪化し、離婚へと至る可能性もある。離婚を前提にしていても、配偶者への面接および医学的説明は、配偶者の将来の精神生活へ利益をもたらすと思われる。
 性同一性障害者が子供を有している場合もある。親の性役割変更の子供への影響に関する知見は知られていない。子供がある程度理解できる年齢であれば、親である性同一性障害者と相談の上、理解可能な範囲で医学的説明をすべきであろう。
7.パートナー面接
 性同一性障害者のパートナーは多くの場合、患者の性同一性に関して十分な理解をしている。しかし、ホルモン療法やSRS等身体的治療を行う場合、その身体的変化に伴い、二者関係が変化することもありうる。身体的治療の前には、パートナーも同席させて、将来の二者関係に起こりうる変化を想定、検討させるのが望ましい。
8.ホルモン療法へ進むときの手続き
 日本精神神経学会「性同一性障害に関する特別委員会」が制定したガイドラインによれば、心理療法単独では十分な治療効果が示されず、その他の諸条件を満たす場合、ホルモン療法へと進み、ホルモン療法で不十分かつ諸条件を満たす場合はさらにSRSと進む。ホルモン療法へと進むには最低でも2名の経験を有する精神科医による診察治療した上での判定が必要とされる。診察治療においては、既述したリアルライフテストの評価が欠かせず、その実施期間は最低でも1年は必要とされる。判定は患者の性同一性に関わる詳細な診断書の作成が必要とされる。その具体的内容は、身体的諸検査の結果、心理的諸検査の結果、リアルライフテストの評価、患者自身および可能であれば家族やパートナーからの情報を基にした、家族歴、既往歴、生活歴、性生活歴、性同一性の形成過程、性役割、性的指向、性嗜好、性同一性障害以外の精神症状の有無等である。
9.ホルモン療法中の心理療法
 ホルモン療法を開始すると、その直接的薬理効果から、精神状態に変化が起こることがある。また、患者自身がホルモン療法前に予想していた以上の身体変化が起きたり、逆に期待以下の身体変化しか起きない場合には、精神状態に影響を与えうる。このようなホルモン療法に伴う精神状態の変化に対して心理療法を行う。
10.SRS前後の心理療法
 SRS前に過度の期待をしたり、手術そのものへの不安、術後の身体的変化・社会生活上の変化への不安を抱くことがある。また、SRS後に、術前の過度な期待から生じる失望感、あるいは過剰な喜び・興奮、SRS後にも依然続く社会生活上の諸問題への苦悩等が生じうる。これらの精神的諸問題に対しても心理療法を行う。
11.社会、法的諸問題への対応
 性同一性障害者は社会生活上の様々な場面で困難を有する。治療者が性同一性障害者に関する守秘義務を遵守すべきなのは言うまでもないが、患者からの要請がある場合には、職場や学校等の社会生活上の関係者に医学的説明や助言を行うべきである。また、学校や職場での処遇をめぐる問題や、戸籍の名前の変更の申請時等で、患者より診断書や意見書を求められることがある。その場合、診断名はもとより、性同一性障害であることからいかに困難を有しているかを専門家的立場から記載する必要があろう。
12.自助グループ等の情報提供
 近年、我が国でもいくつかの性同一性障害者の自助グループが生まれ活動を行っている。性同一性障害に関する医学的情報が乏しく社会生活上困難を有する場面が多い我が国において、共通する経験を有する自助グループへの参加は治療的意味において有用と思われる。参加するか否かは患者自身が決定することであるが、自助グループの存在を伝えることは意味のあることであろう。また近年発達の著しいインターネット等の情報伝達システムにおいても、性同一性障害に関する意見・情報の交換・集積がなされており、関連するホームページ等の紹介も有用であろう。


おわりに

 1998年10月、埼玉医科大学でFTMの性同一性障害者に対してのSRSが行われ、ようやく我が国でも性同一性障害への治療の一歩を踏み出すこととなった。しかし、SRSの実施が性同一性障害者の抱える悩みを全て解決するわけではない。性同一性障害者を取り巻く諸問題を解決するには、精神医療を含む医療体制の充実、法律等の社会制度の整備、そして何よりも社会を共に生きる人々の受容的意識が必要となろう。

引用文献
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12)Imperato-Mcginley J.:Androgens and the evolution of male gender identity among male pseudohermaphrodites with 5 alpha-reductase deficiency,New England Journal of Medicine,300:1233-1237,1979
13)石原明 1997 法と生命倫理20講 日本評論社 
14)石原明 1997 医療と法と生命倫理 日本評論社
15)Kockott G.:Male-to-female and femle-to-male transsexuals:a comparison,Archives of Sexual Behavior,17:539-546,1988
16)Marks I.:Sexual deviants two years after erectric aversion,British Journal of Psychiatry,117:173-185,1970
17)Mendez JP:Male pseudohermaphrodites due to primary 5 alpha-reductase deficiency:variation in gender identity reversal in seven Mexican patients from five different pedigrees,Journal of Endocrinological Investigations,18:205-213,1995
18)Money,J.,Tucker P.,1975,Sexual Signatures:On Being a Man or a Woman,Little,Brown and Company  (朝山新一他訳 性の署名:問い直される男と女の意味 人文書院 1979)
19)日本精神神経学会性同一性障害に関する特別委員会 1997 性同一性障害に関する答申と提言 精神経誌99巻 553-540頁
20)Pauly,I.:Female transsexualism,Archives of Sexual Behavior,3:487-526,1974
21)Stoller R.Perversion,Dell,1975
22)Tsoi WF.:Parental influence in transsexualism, Singapore Medical Journal,31:443-446,1990
23)塚田攻 1998 性同一性障害の精神療法 日本性科学雑誌16巻 108頁
24)van Kesteren PJ.:An epidemiological and demographic study of transsexuals in the Netherland,Archives of Sexual Behavior,25:589-600,1996 
25)Verschoor AM.Psychosocial differences between Dutch male and female transsexuals,Archives of Sexual Behavior,17:173-178,1988 26)Zhou JN.,:A sex difference in the human brain and its relation to transsexuality,Nature,378:68-71,1995

参照文献

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2)穴田秀男 1976 性は変えられるか メデイカルトリビューン日本支社
3)新井康允 1998 性ホルモンの生理学 臨床精神医学27巻 1087-1094頁
4)新井康允 1997 男脳と女脳こんなに違う 河出書房新社
5)Bakker A.:The prevalence of transsexualism in the Netherland, Acta Psychiatrica Scandinavica,87:237-238,1993
6)Blanchard:Clinical management of gender identity disorders in children and adults,American psychiatric press,Inc.,1990
7)Cohen-Kettenis:Perceived parental rearing style, parental divorce and transsexualism:a controlled study,Psychological Medicine,20:613-620,1990
8)De Cuypere G,:Psychosocial functioning of transsexualism in Belgium, Acta Psychiatrica Scandinavica,91:180-184,1995
9)Diamond M and Karen A:Sexual Decisions,Little Brown and Company,1980(田草川まゆみ訳 人間の性とは何か 小学館1984)
10)針間克己 1998 性同一性障害の概念と現況 ケース研究二五四号 31-45頁
  11)針間克己 1998 性別の自己決定権 現代性教育研究月報16巻 1-5頁
12)針間克己 1998 パラフィリア 北村邦夫編 リプロダクテイブ・ヘルス/ライツ メデイカ出版
13)針間克己 1998 判例から考える性別決定の医学的、法的問題 日本性科学雑誌16巻 46-47頁
14)針間克己 1998 社会的存在としての性同一性障害者と同性愛者の苦悩 日本性科学雑誌16巻 113頁
15)東優子 1998 性同一性障害 北村邦夫編 リプロダクテイブ・ヘルス/ライツ メデイカ出版
16)河村代志也ほか 1997 性同一性障害の1症例 臨床精神医学26巻 793-800頁
17)Landen M,:Prevalence,incidence and sex ratio of transsexualism,Acta Psychiatrica Scandinavica,93:221-223,1996
18)Lesile M.:Expressive Psychotherapy with Gender Dyspholric Patients, Archives of General Psychiatry,38:924-929,1981
19)松尾寿子 1997 トランスジェンダリズム 性別の彼岸 世織書房
20)Money J and Musaph H :Handbook of Sexology,North Holland Biomedical Press,1977(広井正彦ら訳 性科学大事典 西村書店 1985) Money J.:Love and love sickness,The Johns Hopkins University Press,1980(朝山春江訳 ラブ・アンド・ラブシックネス 人文書院 1987)
21)森泰美 1996 日本におけるトランスセクシャルの現状と問題点 日本性科学雑誌14巻 26-37頁
22)森泰美 1997 実際の症例に見られる性同一性障害者の転性までの過程 日本性科学雑誌15巻 9-22頁
23)鍋田恭孝 1995 性同一性障害への対応 精神科治療学10(臨)232-235頁
24)中野明徳 1998 性別同一性の障害 松下正明編 臨床精神医学講座第7巻人格障害 中山書店
25)仁平先磨 性転換と法 −戸籍訂正を中心として− 戸籍時報二六九号 4頁
26)小此木啓吾,及川卓 1981性別同一性障害 懸田克躬ほか編 現代精神医学大系第8巻人格障害・性的異常 中山書店
27)大島俊之 民事判例研究五七〇性転換と戸籍訂正 法律時報五五巻一号 202-206頁
28)大島俊之 性転換と法−戸籍訂正問題を中心として− 判例タイムス四八四巻 77-106頁
29)Pauly,I.:Female transsexualism,Archives of Sexual Behavior,3:487-526,1974
30)Rakic Z.:The outcome of sex reassignment surgery in Bergrade:32 patients of both sexes,Archives of Sexual Behavior,25:515-525,1996
31)Stein M.:Followup observations of operated male-to-femle transsexuals,Journal of Urology,143:1182-1192,1990
32)Stoller R.,Sex and Gender,Science House,1968(性と性別 桑畑勇吉訳 岩崎学術出版社 1973)
33)高橋進 1981同性愛とトランスセクシュアリズム 臨床精神医学10巻 675-682頁
34)Tsoi,WF.:The prevalence of transsexualism in Singapore,Acta Psychiatrica Scandinavica,78:501,1988
35)Tsoi WF.:Parental influence in transsexualism, Singapore Medical Journal,31:443-446,1990
36)Tsoi WF.:Follow-up study of transsexualism after sex-reassignment surgery, Singapore Medical Journal,34:515-517,1993
37)植松正 性転換手術の適法限界 判例時報五六九号 判例評論一二九巻 125-127頁
38)World Health Organization:The ICD-10.Classification of Mental and Behavioural Disorders,Clinical Description and Diagnostic Guidelines,World Health Organization,Genova,1992 (融道男ら訳 ICD-10 精神および行動の障害−臨床既述と診断ガイドライン 医学書院 1993)
39)山内俊雄ほか 1996「性転換治療の臨床的研究」に関する審議経過と答申 埼玉医科大学雑誌23巻 313-329頁
40)山内俊雄 1997 性同一性障害について 精神科治療学12巻 582-584頁
41)柳澤千昭 家事実務研究2 ある名の変更、戸籍訂正事件の審判−性のさすらい人事件の顛末 判例タイムス四七七巻 44-47頁

参照判例
1)性的倒錯者に対していわゆる性転換手術を行った医師につき優生保護法第二八条違反の罪の成立を認めた事例,判例時報五五一号二六頁
2)札幌高裁平成三年三月一三日決定 家裁月報四三巻八号四八頁
3)名古屋高裁昭和五四年十一月八日決定 家裁月報三三巻九号六一頁